【トークイベント】屋久島からSDGs~やわら香(やわらか)のアップサイクルアロマで世界遺産を守る!

株式会社ANのYukiと申します。

2023年12月14日に 鹿児島県熊毛郡に本社を置く株式会社やわら香(やわらか)の代表取締役 渡辺優子さんとのトークイベントを開催いたしました。

https://yawaraca.jp/


やわら香は、天然の「香り」を現代社会を生きる人々へ届けるとともに、必要な間伐を通して世界遺産である屋久島の豊かな森づくりに携わっています。


今回のトークイベントでは、間伐材から精油抽出をおこなうことでSDGsにも貢献されているやわら香の取り組みについて伺い、渡辺さんご自身の背景や想い、今後のビジョンをお話いただきました。




■渡辺優子さんとアロマとの出会い

時間や情報に追われる現代人にとって、豊かな自然に満ちた「香り」のもたらす癒しの魅力は非常に注目を集めています。


現に、やわら香で一番の人気商品「眠れる森のおまじないスプレー」の原料は、なんと本州の杉の20倍近く寝つきをよくする成分が含まれる屋久島の地杉です。


渡辺さんがアロマに惹かれた理由の一つは、自然の力を借りて身体を整えることができるという点。


もともとデザインの道で活躍されていた渡辺さんは、ハードワークにより体調を崩してボディトリートメントの施術を受けたときに、初めてアロマを用いて癒しを与える仕事に出会ったと言います。


それを機にアロマオイルを扱う職業に転身され、ある時「このアロマは誰がどういう想いで作っているのだろう」と興味を抱いたそうです。


当時、日本国内で精製されていたアロマオイルはごく僅かでしたが、渡辺さんは自ら工場見学に足を運んでみることに。


そこで生産の工程を目の当たりにして、初めて「日本のオイルをなぜ日本の森の木から作っているのか」という作り手の想いを知りました。


森の抱える課題やストーリーに強く衝撃を受け、これが今でも渡辺さんの活動の原動力となっているそうです。


■世界遺産・屋久島の林業の現状

渡辺さんが初めて屋久島を訪れたとき、潤った空気やそり立つ山々の情景に一目惚れし、根源的な懐かしさすら感じたそうです。


当社の社長である向山も屋久島を旅行したことがありますが、やはり「空気が違う!」と話していました。

訪れる人に清らかさを感じさせる屋久島の自然は、循環が早くて綺麗な「水」の性質にもよるようです。


また、渡辺さんによると、屋久島の中に日本が凝縮しているかのような多様性に魅力があるそう。

九州で最も高い山がそびえる高低差のある地形で、垂直分布によりなんと日本の植物の4分の3が屋久島に生殖しているのだといいます!


こういった植物や人の多様性のパワーに惹きつけられたことが、やわら香創業のきっかけとなったのです。



屋久島の魅力を知る中で、渡辺さんは林業の衰退が及ぼす影響について考えるようになりました。


数千年もの間、人は「植林」という形で森に手を入れながら自然と調和して暮らしてきました。


しかしながら、戦後の数十年間で日本人の生活は大きく変わり、食物も木材も、自然から恵みをいただいていた暮らしは一変。何でも輸入品が手に入るようになりました。


人と森との距離に隔たりができ、本来必要な木々の手入れが行き届かずに、日本の森は荒廃したのだといいます。これが原因で土壌がやせ、土砂災害などの問題も招いているそうです。


世界遺産と名高い屋久島ですが課題は深刻。

渡辺さんは、このような屋久島の森の現状に大きく貢献されています。


■アップサイクルとSDGs

SDGsの項目に即すと、主に「12.つくる責任 つかう責任」、「14.海の豊かさを守ろう」、「13.気候変動に具体的な対策を」等が、アップサイクルを通して期待できる社会活動だと考えられます。


アップサイクルとは、不用品や廃棄物の元の素材を活かして再生し、新しい価値を与える手法。

ちなみに、外見や形を変えずに繰り返し使う場合はリユース、回収した資源を原料として再度製造する場合はリサイクルと呼ばれます。


例えば、ビール瓶や牛乳瓶などを綺麗に洗浄して、そのまま同じ瓶として再使用するならリユース。集めた瓶を再生資源として原料化し、再び瓶を製造したり他のガラス製品に加工したりするのがリサイクル。


一方、アップサイクルは、瓶をそのまま利用してインテリア等の新しい製品に作り替えます。

原料や材料に戻さないまま製品をアップグレードし、より価値を上げたプロダクトに生まれ変わらせるのです。


■やわら香での取り組み

渡辺さんの創業した2012年時点では、まだ「SDGs」も「アップサイクル」という言葉もありませんでした。


近い表現で、農林漁業の「6次産業化」の推進というものがありました。


1次産業、2次産業、3次産業を掛け合わせ「1×2×3=6」とし、農林漁業者による加工・販売への進出を図るのが6次産業。地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す事業として、農林水産省により定義されています。



つまり、渡辺さんは「SDGsやアップサイクルをやろう」と思って活動を始めたのではないのです。


屋久島の森の現状を知り、当初、林業や建築、設計に携わる仲間との共同創業だった背景もあって、森の中で切ったほうがいい木を使うことこそがやわら香の存在意義だとして取り組まれています。渡辺さんにとって外せない軸なのだと。

そして、この姿勢を通して自分の仕事に胸を張っていたいのだと。


今、渡辺さんは所有者が管理できなくなった山を一緒に手入れし、豊かな森づくりのために必要な間引きをおこなっています。

その上で、建築材にならずに棄ててしまう部分を用いて、アロマとなる精油を作り出しています。


さらに、精油を抽出したあとに残ったチップもすべて活かしているそうです!


庭に撒く、ドッグランを作る、お香にするなど。地元の方に大好評で、屋久島内で循環できているとのこと。

産廃を一切出すことなく、100%の再利用を実現しています。


まさに森にとって不要な木を余すことなく利用した、究極のアップサイクルですね!


最初から最後まで、生産から販売までをすべて見届けたいという渡辺さんの取り組みは、結果的にSDGsへの大きな貢献となっていたのです。



■渡辺さんの想いとビジョン

森の抱える課題に取り組むというストーリーは、確かにすべての人にとって受け入れやすいものではなく「そういう説明は興味ないな」と感じる方も当然いるそうです。

ただ、そういった方へも含めて「香りというのは言葉なく伝わるもの」だと渡辺さんは語っていました。


やわら香では、YouTubeやブログを通して、アロマを扱う背景や想いを発信することにも力を入れています。

森林のエピソードを少しでも知ってもらい関心を持つ人が増えたら素晴らしいですよね。


しかし、デジタルでは肝心の香りは伝えられません。


渡辺さんは、だからこそ自ら足を運んで出向くようにしたといいます。

コロナにより出張でのアロマ体験は減っているそうですが、渡辺さんは色々な場所に赴く機会を大切にされています。


さらに、眠りに悩む現代人のお手伝いになるようなプログラムを作りたい!という今後の展望があるそうです。


香りによるケアはもちろんのこと、より良い睡眠のために、屋久島の自然そのものが非常に良い相性で関われるのではないかと渡辺さんは考えています。


デジタルデトックスの場として。

現代社会から自分の時間軸をずらし心身を整える場として。


最近では「眠活」という言葉も聞くようになりましたよね。


やわら香の「眠れる森のおまじないスプレー」を買い求めるお客様を通じて、渡辺さんは物や情報のあふれる今、睡眠に関するお悩みを抱える方が想像以上に多いことに気づいたのだそうです。


そして、睡眠のお悩み解決の入り口として屋久島を訪れ、屋久島の自然を知ってもらうことに繋がれば。

「これができたら、屋久島から受けた恩を返せるかな」という渡辺さんの言葉からは、屋久島を深く愛する想いと感謝が伝わってきました。



■まとめ

今回のトークイベントでは、今年で世界遺産30周年を迎えた屋久島の「香り」によって癒しもたらす株式会社やわら香の取り組みについて伺いました。


世界遺産と聞こえはいいですが、屋久島も森が荒れてしまった地域は当然あり、渡辺さんは林業の衰退による影響に向き合っています。


SDGsやアップサイクルなどと注目を集める前から一貫してこだわってきたのが、切った方が良い木を用いてアロマを作るということ。


森にとって必要な手を入れて間伐材を採り、さらに材木として使えない部分だけを集めてアロマを作っているというお話には、向山をはじめスタッフ一同、非常に大きな驚きでした。

そして、精油抽出後のチップまでも、すべて再利用されているということも驚きです。


「しぶといもったいない精神」と笑いながら語ってくださいましたが、こういった心がけこそ、日本人が忘れつつある自然との共生の根幹なのかもしれません。


また、森と人との生活が離れたことで、森林が荒廃し土砂災害や杉花粉などの問題を引き起こしているといいますが、渡辺さんのお話から、現代社会特有の課題も関連しているのではないかと考えることができました!


過剰なほどの量やスピードの物や情報が取り巻く現代において、長きにわたり山や森と共に暮らしてきた日本人の心身にも影響が及んでいるという観点は、私にとって大きな発見でした。


「香り」によって自然を近くに感じ、落ち着いた時間を作ることも大切かもしれないですね。


株式会社ANは、今後もトークイベントを通して、私たちの豊かな暮らしやSDGsに関する価値のある情報をお届けしていきます。


この場をお借りして株式会社やわら香の代表取締役 渡辺優子さんに厚く御礼申し上げます。


http://an-k.co.jp/


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