【SDGs】受験制度の改革からジェンダー平等を実現する社会へ①

株式会社ANのYukiと申します。

都立高等学校における男女別定員制が、来年度の入試、つまり現在の受験生の代から全面的に撤廃されます。


これまで都立高校では男女別の定員が設けられていて、女子はより高い点数をとらないと合格しにくい傾向がありました。

つまり、一部の高校で合格圏内の点数だった女子生徒が不合格になる状況が続いていたのです。



SDGsの目標においても「5.ジェンダー平等を実現しよう」 と掲げられたように、今回の都教育委員会による見直しも、ジェンダー格差の解消や多様性を認めることへの対策とされています。


■男女別定員制の実状

一般的に入試は成績順に合格が決まりますが、男女別に定員が設けられていると、得点が高かったとしても性別の差によって不合格になってしまうことがあります。


これまで、男女別定員制によって下記のような状況もあったといいます。


・合格基準が男女で51点異なる高校がある。

・女子生徒の合格者が23人増える高校がある。

・都内の全日制普通高校104校のうち85校は女子の合格基準が男子より高い。(令和3年度)

・男女合同であれば合格していた受験生が786人、そのうち691人は女子生徒だった。(令和3年度)

・都立高校の校長の82.7%が、男女別定員制について「必要だと思う」または「どちらかと言えば必要だと思う」と回答。


東京都では男女別定員制の課題を踏まえ、段階的に「男女合同」の定員の導入に取り組んでいました。


平成10年度から緩和の施策を実施。

令和4年度には都内すべての学校で定員の1割を「男女合同」の定員としました。

これは定員の9割までは男女別に合否を決めますが、残り1割は男女の区別なく得点順に決める方法です。


翌年の令和5年度の入試では、さらに「男女合同」定員を2割に拡大しています。


それでも男女で合格ラインが違うので完全に平等とは考えにくいですね。


他の都道府県においては、群馬県で1校(令和2年度入試まで)男女別定員が見られたそうですが、ほぼ実施されていません。


しかし、東京都立の高校にのみ男女別定員制が設けられていたのには理由があるのです。


■なぜ男女別定員制が布かれていたの

東京都は日本でも圧倒的に人口の集中する都市。

およそ30万人いる都内の高校生のうち、半数以上は私立の学校に通います。


つまり、17万人もの生徒を受け入れる私学との協力体制をとることが不可欠。これが大きな理由の一つです。


そして、もちろん男子生徒が不利になる都立高校もありますが、先ほどの調査結果を見ると多くは女子生徒が影響を被っていることが分かります。



しかしながら、男女別定員制はもともとは女子の教育を保障するために生まれた仕組みでした。


女子が通っていた旧制高等女学校では、理数科目の授業時間が少なく、外国語も必修ではなかったため、当時は男女間に大きな学力差がありました。そのため、男子が通っていた旧制中学校を共学化しても、女子の学力の水準では入学することが難しかったのです。そうした中、教育庁から、共学制を実現するために、男女で別の枠を設けて募集するよう指示が出されます。 (『東京都教育史稿(戦後学校教育編)』より)


つまり、戦後、女子教育の機会のために多くの女子校が設立されました。人口の多い東京都で私立の女子校が大きな役割を担ったことは想像に難くありません。


そして現在も都内の私立高校の3割を女子校が占めているのです。


よって「都立高校に女子が集まりすぎると私立女子校に影響が及ぶのではないか」、あるいは「男子生徒が都立に受け入れられない場合、男子の行き場がないのではないか」という争点が主にあったようです。


今回の決定も、男女定員制の完全撤廃後に上記のような影響が受験生にほぼ及ばないことを、合否の推計や段階的な緩和制度から判断したと言われています。


さらに、昨今ジェンダーギャップの課題が大きく注目されていることも、決断の要因だったと考えられそうです。



ジェンダーギャップとは、男女の違いにより生じる格差を指します。


SDGsのターゲットの中でも「5−5.政治・経済・社会の中で何かを決める場に、女性と男性が同じように参加したり、リーダーになったりできるようにする。」という項目がありますね。


次のブログでは、日本におけるジェンダーギャップの課題についてまとめてみます。


参考

https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20230913a.html


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